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第96話 明らかになった私の正体

last update Last Updated: 2025-07-22 21:21:15

「そ、そう……。そして記憶を失う前の私は元天使様から命を狙われ、元天使様に護衛をお願いしたわけね? 我ながら随分大胆な真似をしたものだわ。でも私は天使様に命を狙われるほど悪女だったのかしら?」

私の言葉にセラフィムが答えた。

「いや……あの当時のユリアはそれほど悪女とは思えなかったけどね。ちょっと我儘なお嬢様って感じだったかな? まぁ、頭はあまり良いとは言えなかったけどね」

セラフィムは最後の台詞を小声で言ったのかも知れないが、私の耳にはばっちり聞こえていた。成程……それでセラフィムの身体を乗っ取っていたオルニアスは私に勉強させようとしていたのだろうか?

いや、今となってはそんなことはもうどうでも良い。

「ねぇ。オルニアスは一体何故私の命を狙っているのよ? そもそも天使様に命を狙われるようなこと、した覚えなんか無いわよ?」

「ああ、オルニアス自身はユリアに恨みなんか持ってはいないよ」

「そう言えば本人もむしろ殺すには惜しい人物と言ってたわ。からかい甲斐があったと言って」

「へ~あのオルニアスにそんな台詞を言わせるなんて、なかなかやるじゃないか?」

笑顔になるセラフィム。

「そんなこと言われても少しも嬉しい気持ちにはなれないけれど……それじゃ何故私の命を狙っているの?結局オルニアスは理由を教えてくれなかったのよ」

「彼は天国から魔界に落とされた堕天使だ。通常なら自分の意志で人間界に現れることは出来ない。彼は何者かによって人間界に召喚されたんだよ。ユリアの命を狙う為に」

「な、何ですって……!」

その言葉に当然真っ先に脳裏に浮かんだのは、ノリーンだった。記憶を失う前の私は誰かに命を狙われるほど悪女だったようには思えない。それにノリーンだけはジョンの魔法にかからなかったのだから。

「ねぇ! 私は誰がオルニアスを召喚したか犯人を知ってるわ。その人物の所へ行ってオルニアスを魔界へ帰してもらいましょうよ。呼び出した位なんだから、帰すことだって可能でしょう?」

するとセラフィムは少しだけ悲しげな顔になる。

「ユリア……それは無理だよ。召喚には代償が必要だ。恐らくオルニアスを呼び出した人物は願いを叶えて貰った後、自分の身体を明け渡すつもりだったんだと思う。何しろ堕天使は本体を持たない、魂だけの存在だからね。魂の状態だと地上にとどまれるのは60日間だ。だけど本体を手に入れてしまった
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